クレナイソウ
VOC@LOIDのBL小説置場。マスター×MEITO、マスター←帯人を置く予定。
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Author:水御夜 鱗
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ワタシノセカイ ※DV注意※
マスター
「オイ、メート。それ取ってくれ」
マスター…
「んぁー?…ああ、灰皿か。ほい」
ねぇ マスター
「おー、さんきゅ」
私を見てください
マスターが買い物へ出掛けると聞いてついて行ったら玄関で、「お前らは留守番してろ」と言われてドアを閉められた。
後ろの方でなにか言っている気配がしたけど聞かないフリ。
せめて見送りしようとベランダへ出てマスターの姿を待つ事にした。
窓やベランダの出入り口から差し込む眩しいオレンジ色の陽。
一日の終わりを告げると共に藍色の夜を運んでくる。リビングから一歩外へ踏み出るとひやりとした冷たい風が吹き抜けた。
その風はリビングにも入り込んだようでメイコ姉さんが「閉めなさいー!」と叫んできた。仕方がないのでカーテンもついでに閉めてみる。
一人にして。の、わかりやすい意思表示だと思うよ。
私たちの住む階は4階。
エレベーターを使って2、3分はかかる。マスターが外に出てくるのはまだ先だろう。
ベランダの手摺りに寄り掛かって下方に広がる地面を見つめた。
マンションの周りに植えてある木々は冷たい風と暖かな日差しをあびて、黄色や赤の色付いた葉を落とし色鮮やかな絨毯を形作っているのが見える。
その上ではしゃぐ子供たちが私には…。
握り潰してしまいたい程、嫌なものに見えてしまう。
空に手を伸ばして子供の上に重ねると握り拳を作って力を込めた。
そんな事をしてもどうしようもないのはわかっていたが、そうせずにはいられなかった。
そんな中に見知った形のものが入ってきた。
黒いコートを着た、灰色がかった髪の人。
「マスター…」
声は届かない。けれど、自然と言葉にしてしまう。
マスターは鷲色の髪の人に夢中で、私のことなんて見てくれていない。
絨毯を踏みしめてあるく主の姿は、とても心を締め付けた。子供を避けて道の端を歩き、どこか懐かしげな笑みを浮かべて眺めている。
そして、マスターはふと足を止めた。
「えっ……」
思いもしなかった。きっと真っ直ぐ行って帰ってくると思っていたからこそ、背中を見送れればそれでいいと。
なのに、
マスターがこちらを見上げて、微笑んだ。
そしてすぐに歩き出す。
時間にしてみれば一瞬の事だったが、私には長く感じられた。
心には先ほどまでのどんよりと重い空気ではなく、とても軽く暖かな気持ちでマスターの姿を見えなくなるまで見送った。
気付けば辺りは暗さを増していて、子供たちの声は聞こえなくなっていた。
背後ではベランダに誰か出てきたのか、カラカラと引き戸を開ける音がしたが私は無視を決める。
マスターならば喜んで振り向きたいところだ。
出て来た彼は何も反応を示さない私に何を言うわけでもなく、そっと引き戸を閉めると私と人二人分間を空けて手すりに寄り掛かる。
彼を横目で盗み見ると、手には缶ビールが握られていた。銘柄は、メイトが好んで飲むモノで私の一番嫌いな人が出てきたのだと知った。
「あー、寒いな」
メイトの声は、青いヤツよりも低かったがハッキリとよく通る声で、それも私を嫌いにさせる一つの要因だ。
隣に居る彼は誰よりも周りに気を遣うヤツだから、きっと私が嫌っている事も承知でいるのだろう。
それなのに、私に話しかけてくる。
「帯人、寒くねぇの?」
名前を呼ばれて思わず振り向くと人懐こい笑みを浮かべて私を見ていて。
彼のその表情に私の中の何かが音を立てて千切れた。
遠くで缶の転がった音が聞こえて。
気付けば。彼の上に跨って首元に爪を立てて、力を込めて喉を潰していた。
彼の左手がが握っている、私の右手首は同じくらいの力でに握られている。苦しいのか、と思うと言いようのない優越感のようなものが支配する。
「苦しいのですか?…あなたはこのまま死んでしまえばいいんですよ」
なぜだか楽しくて仕方がない。
彼の口の端からは飲み込めない唾液が流れ落ち、肺は空気を求めているのだろう。マスターの飼っている金魚みたいに口をパクパクと動かして面白い。
最初に見開かれた瞳は、苦しさに歪んでいる。
私の下でもがく彼を止めてしまおうと喉の圧力に集中した時だった。
何かが左の方から私の首めがけて飛んできて、大きな衝撃で身体が揺らぎ手すりに額をぶつけてしまった。
首と額の痛みを感じながら身体を起こすと、彼は身体を丸めて咳き込んでいた。
その姿を手すりに背中を預けながらながめる。惜しいことをしたな、と思いながら。
私には、もう首を絞める力も動く力も残っていなかった。
新しく出来た傷に目を閉じて耐える。
彼の方は大分落ち着いたらしく、激しく咳き込む音も呼吸を整える音も小さくなっていった。
「げほっ…あのさ、オレは苦しんで死にたくないの」
私に首を絞められた後だというのに、口調は変わらずに声だけが擦れていた。
きっと普通のヤツなら怖くてその場から逃げだすハズなのに。
しまいには、ビールがこぼれた事を気にしていた。
「…………あなたは馬鹿なのですか」
何も見るものなんてないので、目を閉じたまま、溜息と共に吐き出す。
くくっ、と笑いを堪える声がして「かもなー」と、肯定の言葉を私に落とす。
彼の真意を測り切れず、溜息をひとつ零した。
私はマスターがいればいい。
他の誰かなんて、知らない。要らない。私には必要ない。
私とメイトはどちらとも動こうとはせず、マスターが帰宅するまでそのままの姿でベランダに座っていた。
帰宅したマスターに叱られたのは言うまでもない。
[2009/01/08 22:56]
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